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到着した駅は、ある意味狙い通りという場所だった。
辛うじて駅員さんは居たが、駅の近くにはコンビニすらなく、田んぼと畑と年季の入った民家が幾つかあるだけ。
まだ夕方を過ぎたところだったのに人通りも少なく、駅を出て歩き始めても、僕たちを咎める人はいなかった。
だから、僕たちは歩いた。
くだらない話をして、ふざけあって、時々ちょっと言い争ったりもして。
歩き続けた。
「どこへ行くの?」
「これからどうするの?」
誰も、そう尋ねる人はいなかった。
「そろそろ日が沈むね」
そう呟いたのは、多分サトルくんだったと思う。
僕たちは、その時初めて足を止めた。
四人並んで、名前も知らない山に沈んでいく太陽を眺めた。
その光の最後の一片が、スポットライトのように天上へ伸びる。
それがだんだんと細くなり、やがて消えていった瞬間だった。
僕はついに泣き出した。
太陽が見えなくなると、途端に夜の気配は増す。
だんだんと濃くなっていく闇の存在は、僕の心に影を落とした。
怖かった。
「泣くなよ、ワタル」
ケンちゃんはそう言うと、自分のほっぺたのあたりを引っ張って変な顔をして見せた。
面白かったけど、僕は泣き止まなかった。
「ごめんね」と言った。
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