第1章

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 ――ってことはどういうことだ。  ロボットたちは青年のDNAを認識しているはずだ。にもかかわらず、ふたつの乱暴な影をともに異物と判断した。だからこそ今、双方を寄ってたかって抑え込んでいるのだ。  つまり、両者ともあの青年ではないということだ。  では、彼はどこへ行ったというのだろう。  あのどさくさに紛れてうまく脱出したのだろうか。  それにしてもいつの間に、いったいどこから?  主である私がこんなザマで脱出を試みているというのに。  シーツが突如、張りをなくし、私は体勢を整えられぬまま落下した。  私の身体はきっと愛車のバンが受け止めてくれる。  衝撃。息が止まる。  目をあける。  机と窓枠が降ってくる。  身をひねって車のてっぺんから転落、地面に突っ伏す。  はじける机と窓枠。  私は頭をおおい、胸や腹に広がる鈍痛に耐えていた。 「あなた車は?」 「ああ、バッテリーがあがっちゃって」 「ようし、みんなそろったところで食事だ」 「やあ、こいつはうまそうだ。さ、熱いうちに食べよう」  家に帰ったのか。  いや、ちがう。  頬に触れているのは味気ないアスファルトだ。  きっと私の願望が幻影をつくり出し、眼前に広がったにちがいない。  それにしてもちょっと妙だ。  まあいい。  とにかく帰ろう、我が家へ。  目をしばたたきながらバンに乗り込む。  勢いよく発進し、机も窓枠も振り落とす。  へこんで天井の低くなった車の中で、肩をすくめて運転しながらカーラジオをつける。 〈もしものときの頼れるヒーロー! トラフィックマンのトラフィック保険はあなたのカーライフを安心サポート!〉 〈カーペンターマンがお家を若返らせます。どんな小さな工事も安心見積もり、建物にもアンチエイジングを!〉 〈ウェザーマンのウェザーリポート! 明日も天気にしてやるぜ!〉  人間の仕事も今や平和を愛するこいつらが請け負うようになった。  うなりながらCDに切りかえる。『ROCK AND ROLL HERO』が車窓を震わす。アクセルを踏み込み、家路を急ぐ。  我が家に着いた途端、“正義”に行く手を阻まれた。 「ここ駐車だめだよ。来客聞いてないから。アタシ? アタシゃ守衛戦隊ガードマンとこのガードグリーンだよ」普段は犬の番をしているだけのヒーロー様が聞いてもいないことを吠えたてる。「セールスならお断りだよ」
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