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「ごめんねっ、律にいちゃんっ」
「良いんだよ、アーちゃん」
律の横に立つジュリは言い直せて偉いなぁ、可愛いなぁといったデレデレの表情でジュリは娘の頭を大きな掌で優しく撫でた。
俺たちの娘は世界一愛らしいなと、妻とアイコンタクトをとってから、お宝を自慢する犬みたいに誇らしげな表情をして、律の方を見たものだから、思わず笑ってしまいながらも、確かに、
「とっても可愛いですね、アーちゃん」
と感嘆しながら言えば、ジュリは破顔した。
律は気が付いてしまった。
ジュリの事が愛おしいのだということに。
自分だけを見て欲しいとか、この家族からジュリを奪ってやろうとか、全く思わないから、これは恋ではないかもしれない。
でも、律がとっくに失くして、施設や学校での経験から人と深く関わることを諦めている律にとって、もう二度と手に入らないだろう家庭という幸せを持つジュリを、その中で笑い、時折律にまで笑顔のお零れをもたらすジュリを、心から愛おしいと、絶対にこの幸福ごと守ってやりたいと思ったのだ。
これが愛でないのなら、なんと名付けるのだろう。
律はジュリを愛しているのだ。
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