第ニ章

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帰りの際、寮までジュリが車で送ってくれるという申し出を、今日の主役の父親を借りる訳にいかないからと、断れば、アーノルドはもうお眠の時間だからと、押し切られた。 柔らかな灯りを放つ住宅街を抜けて、車は会社近くの律が暮らす寮へと向かう。 行きに寄ったデパート付近を通過すれば、周りを走る車や大きいビルも無い。 車内を心地よい沈黙が満たす中で、ジュリが徐に口を開いた。 「ずっと言おうと思ってたのですが、俺に敬語なんか使わないで良いです」 「え…いや、でも年上の方ですし…」 「年は関係ないです。律さんの方が先輩ですから。何より、いつも熱くなって突っ走る俺を律さんは冷静に止めてくれたり、諭そうとしてくれたりするんで、尊敬してます」 「ジュリさん…」 律は尊敬と言う言葉に感動しつつも、止めたり諭したりはするけど、いっぺんも言うこと聞いたことないじゃないかジュリさん、とチラッと思った。 「さん付もやめてください。ジュリで結構です」 「わかりま…わかった。じゃあ、ジュリさん、いえ、ジュリも敬語はやめて、僕のことは呼び捨てで」 律は素直に敬語とさん付をやめた。なのに、ジュリときたら、 「いいえ、先輩ですから」 本当に先輩の言うことを聞かない奴だと溜息をついた。
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