第3章

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地下へと続く重厚な扉は、奪い取った鍵束によってあっさりと開いた。 急がないとこの屋敷の警備達が押し寄せてくる。 仄暗い下へと伸びる階段。 「ライトがいるな…」 「持って来てます」 「ありがとう」 用意周到なジュリが、ライトで律の足元を照らしてくれる。 希から渡された資料に書かれていた人物の屋敷に、律とジュリは、忍び込んでいた。 そこに書かれていた人物は、この国でもかなりの権力と財産を持ち、若い人材を危険な場所で使い捨てのように扱うキラムの存在に異議を述べる、キラム反対派だった。 「まさか…バンジュ・ダイマさんが…」 要人警護の仕事関係で、その要人がダイマの友人で、ダイマと会った時に、 「私は何も君達が憎くて反対しているわけではない。君達若い命が、少しばかり待遇が良いというだけの餌に釣られて、汚い権力者達の手によって玩具にされて、簡単に失われるのが惜しいのだ。だから、どうかくれぐれも自分を、命を大切にして、なんなら、私の所に来なさい。悪いようにはしない」 と、声を掛けてくれた人だ。 子供の頃、偽りだらけの大人達の中で育って来た律から見て、言ってくれた時のダイマの眼差しは、嘘偽りの無い、真剣なものだった。
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