第4章

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飛び散って着いた血の臭いが、肺と頭の中を満たしている。 出てきた屋敷の中の惨状は、酷い有様だ。 それはそうだろう。 今の律には、人を守りながら手加減など出来る技量は無い。 命を狙ってくる相手がいれば、例え殺す事になっても迷いなく活動を停止させる。 まず最初に、希に教わったことだ。 人を傷つけ、或いは殺してしまうことには、この職業に就いて慣れた、というより呑み込んだ。 敵の血の臭いにも動じなくなった。 この心を苛む血の臭いは、敵のものでは無い。 結論から言えば、律達は収監者を無事に助け出し、仲間と共に屋敷を出た。 途中、ダイマに会ったが、別の任務でこちらには来ていない希の要請によって、現れた幹部に背後から撃ち殺された。 医療班が収監者達を車に乗せる。 これから、健康チェックや心のケアをする為だ。 生き残っているダイマの部下は、幹部が連行して行った。 ジュリは、医療班に傷の手当てを受けている。 律を庇って撃たれた傷だ。 幸いにも、弾が掠っただけで済んだが、少しばかり深い傷な為、血が飛び散って庇われた律の頬を濡らした。 あの後からずっと、庇われてジュリに怪我を負わせたという事実が、濃い血の臭いとなって律を苛立たせるのだ。
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