79人が本棚に入れています
本棚に追加
「うんうん、まあ、そうだけど?」
椅子から立ち上がってデスクに腰掛け、さっきまでとぼけていたのは何だったのか、まるで冷蔵庫にあったお前のプリンは俺が食っちまった程度の悪気の無さで、希はあっさりと認めた。
「っ…テメェっ…」
頭に血が上り真っ赤な顔をし、これまで聞いたことのない乱暴な口調で、巨大な肉食獣の如く襲いかかったジュリを、希は素早い動きで、赤子の手を捻るくらいの簡単さで掴みかかったジュリの腕を捉えて背へ回し、今まで腰掛けていたデスクにうつ伏せに押さえつけた。
ジュリは?いて振り解こうとするが、ビクともしない。
「やれやれ、ジュリくんはただデカイだけで弱すぎるな。でも、俺がやったと嗅ぎつけるんだから脳筋って訳じゃあないらしい。でも、バカではあるねぇ。親友のことは忘れて今の家族と安定した仕事とで、充分、幸せに暮らしていけたはずなのに…数年前、あの子の隣に並ぶ、一度見ただけの俺が忘れられなかったの?男冥利に尽きるねぇ。俺はすっかり忘れていたってのに。律くんに、ジュリくんが親友の、なんだっけ?確か…ナナくんを探しているって聞かなければ…さ」
「え…」
律にちらりと送られた希の視線は愉快そうだ。
最初のコメントを投稿しよう!