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「ありがとうねぇ、律くん。おかげでさぁ、目の上のたんこぶっていうの?なぁんかチラチラと煩わしいものがはっきりわかって良かったよ」
先程、ドアを閉めた時と同様の気軽さで言われた礼は、しかし、希と向かい合っているのに律の耳には入って来ない。
意識は全て、痛いほどの視線を寄越しているであろうジュリに向かっている。
「どうしたのぉ、ジュリくん、そんな刺し殺しそうな目で律くんを睨んじゃって。律くんを責めるのはお門違いだよ。ジュリくんのことだから、口止めとか別にしてなかったんでしょ?勝手に信じてペラペラ喋って、そして今、痛い目に遭っている。自業自得だよねぇ、巻き込まれた家族が可哀想だよ」
勝手に信じて、ペラペラ喋って。律はジュリへの言葉がまるで希に話した自分へ向けているような気がして、頭の奥がぐらぐら揺れているような目眩を起こし、手の平で顔を覆った。
「親友くんはさぁ、苦しい状況に陥っていて、俺と定期的に会っていて唆されていること、ジュリくんに言わなかったんじゃない?信頼されてなかったんだねぇ」
盛大な舌打ちをして、希の胸ぐらを掴んだジュリなど御構い無しに、ポケットから取り出した電話機を弄りながら、
「アーちゃんだっけ?素直で可愛いねぇ。仕事が大変なパパへの応援メッセージを頼んだら、喜んで録画させてくれたよ」
と、再生ボタンを押す。
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