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色々と知っているジュリを消すために、電話機を操作して腹心の部下達を呼んでおきながら、娘の映像を見せて激昂させたのだ。
「ところで、律くん」
希は急に、棒立ちのまま動けずに居た律へと話を振る。
「俺ねぇ、律くんのことは本当に可愛くて、大切な部下だと思ってるんだ。だから、俺、色々と知っちゃった律くんの事はどうこうしようなんて、思えなくて…。律くんも心から俺の事、慕ってくれてるよね。目を見ればわかるよ。こんな場面を見て、大好きな希さんがどうしてっていう疑問と戸惑いでいっぱいだけど、俺に対する嫌悪感はないもの」
確かに、律は希がジュリに対してした仕打ちを聞いて、こんな状況を目の前にしても、希が冗談だよと言って笑い、ジュリの娘や妻、そして親友も希が攫ったのではなくて、実は誰かに狙われているとか、危ない状況に陥っていたのを助けて何処かに匿っているのではないか、なんて、そんな胸焼けするほど甘ったる過ぎる幻想を抱いている。
だけど、それほど希を信じているのだ。
希は律へ近寄ってきて、抱き締めると、
「律くんはさぁ、俺の事は大好きだけど、ジュリくんの事は、愛しちゃったんでしょう?」
耳元で周りに聞こえないように、吐息のような声で囁く。
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