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「いいえ、ただ希さんの話を聞いて、やっぱりこの男をここでこのまま殺すのは惜しいのでは無いかと思いました」
名前ではなく、この男という突き放した呼び方。
「律くんが、殺したく無いんじゃなくて?」
「…僕の、この男への気持ちは貴方の言う通りだったかも知れません。だったらいっそ、ここで殺す。それも良いでしょう。でも…」
気が変わりましたと言ってジュリを見下し嘲るように笑う。
「だって、この人、凄く弱いんですよ。単身乗り込んでくる馬鹿さも、結局は捕まって、地面に這いつくばっている姿も、愚かで無様で、なんでこんな男を僕はって感じです。けれど、一度は可愛い後輩だった男だから、今ここで死なせるよりも、この世界の何処かで生きている妻と娘と一生会うことは無いまでも、少しでも長く存在させてやりたいな、と思いまして。それに見た目通り健康で頑丈なので、売っぱらって希さんの儲けにする方が良いんじゃ無いですか?希さんなら簡単かは、解りませんが死体処理って意外と面倒でしょう?」
図体デカイですしと、律はジュリの肩を蹴りつけた。
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