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「もう…ひとりでは無理だ」
律に言われて動きを止める。
「なに?」
「今のジュリちゃん独りの力じゃ無理だって言ってんの。」
真を突かれて、ジュリは苦悶の表情を浮かべて、
「そんな事は…」
わかってる。が認めるわけにいかない。
「今の俺だったら、ジュリちゃんの力になれるよ。だぁってぇ、今の俺は最高幹部の内の一人だもん」
ジュリは心底驚いた表情をして律を見る。
「はっ…よっぽどあの男と二人で汚い手を使ったんだな」
嘲るようにして言い放てば、
「そうだよ。そして、希さんは俺が殺した」
律の告白に息を飲む。
「自殺だったけどねぇ、俺が殺したようなものだ。あの人の何もかもを暴いて奪ったんだから。あの人、俺に対しては甘くて隙だらけで、俺はそれを利用して追い詰めて殺した。あの人にとって、あの人がまだまだ新米で、弱い者を守り抜いて悪を一網打尽に出来ると信じていた頃に唯一、損得なく助けられた俺は、あの人の過去の良心だってさぁ。可哀想にねぇ、俺なんか助けたせいで殺されちゃうなんて…」
希さんの真似してんのは弔い代わりってのもあるかもねなどと、顔に貼りついた完璧な笑顔でいう律に、ジュリは何も言わずにまた椅子に座り直して、出されたウィスキーのロックを受け取った。
「そんなお前に…助けられたんだ」
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