最終章

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ジュリが慰めるでも感謝するでもなく口にした事実。 「あの日、連れて行かれてトラックの後ろに積まれた檻に入れられた俺は、上着の襟の違和感に気が付いた。どうにかしてその違和感の元を床に落として手錠をされた後ろ手で拾えば、それは手錠の鍵。あの時、俺の襟に触れて鍵を隠せるのはお前だけだ」 「えー知らなぁい。ジュリちゃん上着着るときにうっかり襟に鍵つけたまま忘れてたんじゃ無い?」 白々しくも律がしらばっくれると、ジュリの冷たい目線が刺さった。 「うわー、今日イチ冷たい眼差し。はいはい、ジュリちゃんの襟に鍵つけたのは俺ですぅ、希さんの部下に渡したと思ったらジュリちゃんの襟に置き忘れちゃったみたい。だから、そんな俺のドジには借りだとか感じる必要ないからねぇ」 「…当然だ」 「ふふふっ…」 ジュリの応えに律は笑って、二人はしばらく無言で酒を飲み交わす。 徐ろに律が、 「…金とそれなりの権力っていう力を持つ今の俺には、人を売り買いする連中との繋がりもある。大切な人達を探したいんだろう?だったらどんな手でも使って、憎い奴でも利用しろよ。じゃないと、あんな連中相手にするなら、死んで灰になっても、何もこの手の中には戻って来ない」 ジュリの膝の上に乗せられた大きくてゴツゴツとした男らしい手を、上から握り込んだ。 振り解こうとしたジュリの手を、細くてとても最高幹部には見えない手なのに、力で抑え込めるほど強い律の手。
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