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しばらく律の真剣な眼差しを無言で睨んでいたが、やがて諦めたように嘆息して、
「だったら…望み通り利用してやる」
と言って、酒を飲み干した。
「そうこなくっちゃ!よろしく、よろしく!」
律は破顔して捕まえていた手を握手するみたく両手で持って、ぶんぶんと縦に振った。
気が済んだようで離された手を取り戻して、今度こそ店を出る為に立ち上がって、財布を出した。
「いいよぉ、今日は俺の奢りっ、俺達が堅ぁーい絆で結ばれたお祝い!!」
「勘違いするな、ただのギブアンドテイクだ」
紙幣をバーテンに数枚渡して扉へ向かう。
律も同じく、会計を済ませて跡を追った。
ドアを開けて、外に出る。
しばらく無言で、同じ方向に歩いていたが、
「じゃあ、俺、こっちだから。とりあえず、また情報屋を通して後で連絡するねぇ」
別れ道に差し掛かった。
去っていく後姿に、ジュリが、
「…信じて良いんだな?律」
と、声をかける。背を向けたまま応える律の
「もっちろん、必ず…」
の後に続く言葉は風で聞こえなかった。
ジュリは何故か動けずに、小さくなる後姿を見守っていると、
「そうだぁー!俺!今!ホープって呼ばれてるからぁ!!よろしくねぇ!!!」
突然振り返って、飛び跳ねながら大声で律が叫んだ。
片手を挙げて了承し、ジュリも家に帰る為に歩き出した。
これからさらに忙しくなりそうだという予感はしたが、頭の中の独りでは無理だという警告は聞こえなくなっていた。
ホープとジュリの人生を賭けた人捜しが始まる。
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