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私の大きな声に、ビクッと肩を震わせてから、恐る恐る振り返ったカオル。
私はできるだけ笑顔を作ってみる。
「オレンジ、りんご、ぶどう、カルピス・・・飲みたいものある?」
カオルに聞きながら、自分でも頭の中で飲みたいものを考える。
私は・・・・久しぶりにカルピスでも飲むかな。
「・・・・・」
カオルは真剣に考え込むような表情をしている。
そんなに真剣に悩むことだろうか?
あまりにも歳がかけ離れているからか、そんなカオルの様子が不思議でならない。
「・・・・、」
カオルが口を大きく開きかけ、何か発しようとしたその時。
開けていたベランダから風が入り、白いレースのカーテンがふわりと舞い上がった。
カーテンに遮られるように、私の視界からカオルが一瞬消える。
入り込んだ風が時間差で私の肌に触れる。
生ぬるい夏の終わりの風。
冷たくも、熱くもない、中途半端な温度。
わずかな湿気を残して消えていく風に、カーテンが窓際に吸い込まれる。
再び姿を現したカオルは、まっすぐに私を見つめていた。
その強い視線に、一瞬だけ胸の奥がざわついた。
「・・・あ、ごめん。聞こえなかったんだけど、」
私の声は、ほんの少しだけ揺れていた。
「・・・・カルピス。」
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