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「おう、任せとけ。」
ご機嫌に笑った水原が、その大きな手でお皿を重ねていく。
台拭きを持つ自分の小さな手とは違う、大きな手。
多分、私は、ちゃんと水原が好きだ。
「さ、ちゃちゃっとやってしまいますよー。」
鼻歌混じりの水原の声に勢いよく流れる水音が被る。
水、出しすぎじゃないかな・・・などと思ってしまった自分に、ため息が漏れる。
流れる水音が止まり、水原の鼻歌がはっきりと耳に届く。
あ、この歌・・・・・
振り返ると水原の白いシャツがリズムを刻むように揺れている。
「・・・ご機嫌だね。」
嫌な感じに固まりかけた心が少しだけほどける。
「ん?そりゃあ・・・ね。」
水原の耳が赤くなるのと同時に聞き慣れた鼻歌が消える。
自然と足が動いていた。
引き寄せられるように私は水原を後ろから抱きしめた。
「え、ちょ、カオリ??」
頬に当たるシャツから水原の汗の匂いがする。
戸惑うように慌てた水原の声が、抱きしめた体から振動となって伝わってくる。
「あ、あのさ、まだ洗い物、途中なんだけど・・・」
「・・・・いいよ。」
私の小さな声に引っ張られるように、濡れたままの冷たい水原の手が私の腕に触れた。
私は少しだけ腕を緩める。
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