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「万物に宿る怒りの力よ……」
手を胸の前で交差させて、人差し指と小指だけを立て、ポーズを取る。
「人に生まれる悪意よ、我に力を与えたまえ……」
雷光がはじけるような音と共に、その人物にスポットライトが当てられた。ボクサーパンツだけをはいた半裸の男がターザンのようにステップを踏み、相手を威嚇した。乳首に貼ったキラキラする☆型のシールが痛々しい。
「我こそは怒りと憎しみの使者・ペペロンチーノ峯田なり!」
マスクをかぶったその人物の声に合わせて、野太い歓声が上がる。
対角線上に姿を現すのは、スラリとした長身に小麦色の肌をした若いおとこ。彼にスポットライトが当たると、女性の黄色い声が上がった。
二人はしばらくにらみ合い、先に攻撃をしかけたのはペペロンチーノ峯田。彼のストレートパンチは、細身の腕から繰り出されるとは思えないほど重い。しかし、彼はあまりに真っ直ぐすぎる。
あっさりと避けると、反撃をした。
ペペロンチーノ峯田に負けないくらい真っ直ぐに放った右ストレートが、冗談かと思うほどキレイに決まってペペロンチーノ峯田はリングの外に吹き飛ばされた。
何とかリングに戻ってきたペペロンチーノ峯田は、反撃をするも、ほとんど一方的に攻撃をくらっている。
ペペロンチーノ峯田は今日もダメか、という空気になったときに、彼は大きな声で笑い出した。
「ははははっ、今日はこのくらいで勘弁してやろう。しかし、ペペロンチーノ峯田は何度でも復活するのだ……トナカイッ!」
ペペロンチーノ峯田が鼻血を吹きながらそう呼んで指笛を吹くと、化けトナカイこと救護スタッフが、後ろに倒れるペペロンチーノ峯田をさっと後ろから支えた。彼はそのまま退場した。
勝利を知らせる鐘の音に、勝者は高々と拳を掲げた。
笑いながら、応援してくれた観客席に順番に頭を下げるおとこは、選手の入退場口を心配そうに見てつぶやいた。
「峯田さん、また手加減したな……」
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