あくだま

第一話 ペペロンチーノ峯田 オークションにかけられるの巻

「うう……。ぼくの一晩は浮葉がいいエンディングを見るためだけに課金したソーシャルゲームより安いんだ……」
「あれは、それまでだってそれなりに課金させておきながら『さらに三千円出さないと本当のエンディングが見れない』と言うから仕方なかったんだ」
　浮葉が後悔していない様子だったので、峯田は一応安心した。『穏やかな物腰の古本屋店主（夜はドS）』と、無事に幸せなエンディングを迎えられたらしい。
「それはともかく、たとえ落札価格が五百円でも、お前が売れた値段で許してやろうと言われたらこちらとしてはその話に乗るしかない」
「あまりに自分が信頼できなさすぎて、それならぼくの家にあるエルメスの食器をオークションに出したほうが、まだ高値がつく気がするよ……」
「妖怪に食器の価値はわからん」
「でも実際問題、もしぼくが三万円とか、まあ三千円でもいいけど、それで落札されたとしても闘技場の補修には全然足らないんじゃない？　物を用意して、さらに陰陽師に結界張らせないといけないんだろ？」
　峯田が素朴に疑問を口に出したが、浮葉は思いのほか深刻な顔をして黙った。言おうかどうか迷ったらしい後で、嫌々そうに口を開く。
「ガチなのが何人かいるらしい」
「ガチって？」
「ペペロンチーノ峯田の一夜をガチで買おうとしている勢」
「ほぁ」