23人が本棚に入れています
本棚に追加
峯田は目を丸くして、他人事のように鳴いた。
「一人目は、石川の爺さんだろ」
「ああ、あの人ホモだからね。ぼくみたいなの、好きそう」
峯田は石川氏のことを思い出した。いつもにこにことして、何を考えているのかわからないたぬき爺だが、周りで働いている男たちは似たような外見をしている美男ばかりだ。おそらく妖怪を自分の好みの外見に変幻させているのだろう。
「こういうときに遊べるお金も持ってそうだしね。ていうか、石川さんって勃つのかな? もう七十歳過ぎてるんじゃなかった? 人間だよね?」
「ふむ。こういう話がある。ある老人が若者に腹いっぱい食事をさせ、食事代どころか、食べたことに対して報酬まで払ったそうだ。それは何故か? 老人はこう言った。自分はもう体力が衰えて満腹になるまで食べることすらできない。だから若者がめいっぱい食べるところを見たかったのだと」
「なるほど、わかる」
「つまり、若者が元気に勃つところを見ることだけを楽しむのかもしれない」
「なるほど、わかんない」
峯田は叱られた子犬のように情けない顔をした。
最初のコメントを投稿しよう!