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「くっ、ここもダメか」
炎の迷路と化した校舎からの脱出。それは至難の極みだった。
刻々と広がる炎は、来る時に使用した廊下を歩行不能な炎の海にした。
高性能な防火服を着てはいるものの、無制限に炎を無視できる訳ではない。
服の耐火性能を超える炎に晒されれば、耐火服と言えども炎に包まれる。
「お、おい、崩れるぞ!」
「退避、退避しろっ!」
交錯する無線。降り注ぐ炎の固まり。四方が炎の壁となり、頭上から熱が舞い降りる。
「命(みこと)……すまん」
職務に忠実な、勇敢な消防士は真っ赤な炎に呑まれていった。
その日の昼、焼け跡から炭化した消防士の遺体が発見された。その姿は、とても直視出来るものでは無かったという。
後日、現場検証と助けられた当直の教師の証言から、この火事の原因がタバコの火の不始末であった事が判明した。
このニュースは一頻り世間わ騒がせたが、すぐに他のニュースニュース埋もれていった。
火事の四日後、市により殉職した消防士の葬儀が執り行われた。
式は関係者だけで執り行われ、ひっそりとしたものであった。
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