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「え?」
「あんたみたいに若い人は、中身が変われば体も変わるから」
老眼鏡の奥の、垂れた瞼の下から、医師の瞳が真剣な表情でこちらを見つめていた。
「はあ」
中身が変われば、の意味がいまひとつ掴めなかったが、
生返事をして礼をいい、診察室を出る。
マンションの前まで戻ると、エントランスにいた人影がこちらへ駆け寄ってきた。
顔を見てぎょっとなる。
「倉科!」
「昨日はごめん」
彼が深々と頭を下げる。
「いや、私こそ」
というか、あんな台詞を吐いた、私のほうが圧倒的に悪くないか?
なんで、謝りに来たんだろう。
彼の視線がほのかな熱を帯びているように感じる。なんだか頬が熱い。
「俺が強引に誘ったりしたから、学校休んだのかな、と思って」
私は首を振った。言葉はなかなか出てこない。
心配してくれたとわかると、嬉しかった。
「学校休んだのは、アレルギーの発作が出たからだよ」
「そうなんだ」
倉科は半分ほっとした表情を浮かべる。
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