28人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
「そうか……ってか、俺と帰るとそんなに嫉妬されるのか。なんか恥ずかしっ」
倉科は自分の頬を両手で、ぴたっと包む。
「そこがポイントではないよ」
「いやいや、一番のポイントでしょう。そうだとすると、俺はいつまでも貴田と帰れない」
「えーと倉科、だから、一緒に帰れない理由を説明したんだよ」
ちょっと調子に乗ってしゃべりすぎたかもしれない。
そのせいで、一番伝えたいことが伝わらなかったんだろうか?
倉科が髪をくしゃくしゃっとかき乱したかと思うと、えーと、と言いにくそうに口を開いた。
「貴田、友だちいないだろ。作らないっていうか、ずっと距離とってるっていうか。何人かと一緒にいるけど、本当の意味で、心開けてない。夏休みの前、それに気づいたんだ。海行っても、祭り行っても、貴田どうしてるかなって、ふっと浮かんできた。だから、学校が始まったら絶対、一緒に帰ろうって決めたんだ」
倉科の言葉に冷や汗が出る。
ああ、マジか。隠れ蓑、ばればれだった。
「あのさ、嫉妬されるのが原因なら、逆にしてみてくんないかな」
彼の身体が、一歩近づく。
最初のコメントを投稿しよう!