【嫉妬アレルギー】

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「逆って?」 「貴田が俺を追いかける。俺は貴田から逃げ回ってるってことにしよう」 「うん?」  倉科の提案はこういうことだった。  倉科は、私が追いかけてくるからと、みんなを遊びに誘わないし、誘われても断る。  学校での接触は避け、バス停や本屋で待ち合わせて帰る。  もし誰かに見られても、倉科は被害者で、私がストーカーのようにつきまとっているだけ、と理解される。  そうすれば、嫉妬は生まれない、というのだ。  半信半疑だった。倉科の発想はあまりに単純で、どこかに落とし穴が潜んでいそうだ。  周りを欺くことは、嫉妬や羨望どころか、学校での居場所を失うかもしれない危険なことだ。 (でも……やってみたい)  だって、嘘をつくことはずっとやってきた。  言いたいことを言わず、特技も隠してきた。 「中身が変われば、体も変わるから」  老医師の言葉が、どこかでぼんやりと響いている。  そう、変えてみよう。自分を騙すのをやめよう。  倉科と、一緒に帰ること。  自分への挑戦として、向き合ってみようと私は思った。
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