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「……おまたせ」
最初の待ち合わせは、本屋にした。
外は細かな雨が降り、色づき始めた落ち葉が風に舞っていた。
立ち読みしていた雑誌を本棚に戻し、倉科は微笑む。
「漫画の新刊出てるか、見てもいい?」
「うん」
私は彼を利用しているのかもしれない。
だって、なんだか胸がしめつけられる。
彼の人の良さを利用して、秘密の共有を楽しんでいるのかもしれない。
新人漫画家についての講釈を聞きながら、ちょっとだけ後ろめたくなる。
その分、振り子の反動のように、紙がめらめらと燃えるような興奮が体を熱くする。
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