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「倉科先輩。待ってました」
アイドル並みに整えられた前髪、小さな顔、華奢な手足。
清潔感のある制服の着こなしも含めて、かわいい女子高生の代表選手みたいな子だ。
「マフラー、してくれてないんですね」
倉科の顔を見る。この子からのプレゼントだった、らしい。
タイミング悪く、私の乗るバスが来た。
どうしよう、という私の迷いを見透かしたように、倉科が言った。
「貴田」
息を詰めて、次の言葉を待つ。バスの扉が、音を立てて開く。
倉科の口が動いた。見慣れた手がひらり、と空中に挙げられる。
「バイバイ」
それを聞いて、心臓がきゅっと痛んだ。
私は思わず顔をそむけ、バスのステップに足をかけた。
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