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あの女の子、可愛かった。
私、倉科大樹のことを、嫌いどころか好きになっていた。
独り占めしたくてたまらなかった。
でも叶わないんだ。
もうほとんど、酸素が入ってこない。
遠のく意識の中で、こんなことを思った。
はっと気づくと、ソファに寝かせられていた。
母親が、床で倒れていた私を見つけ、慌てて抱き起すと、寝息を立てて眠っていた、と教えてくれた。
服の袖をまくってみる。赤くない。かゆみもきれいに消えていた。
ほっとすると同時に、逃れられないんだ、と悟った。
願って、叶わなくて、絶望して。
みんな、こんな感情と闘っているんだ。
私は嫉妬心なんて持ちたくなかった。
愚かで醜いものだと思っていたから。
でも、どんなに愚かでも、醜くても、本当の感情を持ちあわせる以上、
嫉妬心からは逃れられないのだ。
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