【嫉妬アレルギー】

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 埃っぽい戸棚に寄り掛かり、お弁当のミニトマトをつつく。  倉科大樹は、一言でいうと、元気のいい男子だ。  スポーツ全般が得意で、ゲーマーで、カラオケ好き。  顔も身長も人並みだけど、目をきらきら輝かせながら、  いつも放課後、誰を誘って遊ぼうかと考えている。  彼なら、一緒に昼休みを過ごす相手に不自由しないはず。  なのに、夏休みが終わった頃からから、何故だか私に声をかけてくるようになったのだ。  彼女はいないようだが、私が知っているだけでも、気のある女子は片手では足りない。  廊下を歩けば、先輩からも後輩からも声をかけられる。  そんな彼に興味をもたれたら、複数の女子に嫉妬されるのは目に見えている。  頼むから別な女子のところへ行ってくれ。  そう願いながら、味のしない弁当を半分だけ口にし、  休み時間終了ぎりぎりまで待って、科学準備室を出た。 「じゃーん」  扉のすぐ外で、倉科が振返ってこちらを見上げた。  体育座りで待っていたらしい。
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