29人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
体をかかないように、歯を食いしばって帰宅する。
ひとまず冷蔵庫の氷を、熱を帯びている場所と、リンパ腺のある脇などにあてがう。
ひどい自己嫌悪を感じ、気持ちが浮かない。
症状が出るのがいやで、倉科を傷つけてしまった。
彼の善意を、仇で返したのだ。
『嫌い』とまでいう必要はなかった。
もうちょっとソフトな、オブラートで包んだ表現をなぜ思い付かなかったのだろう?
自室のベッドの上で、かゆみ止めクリームを塗りながら、考える。
倉科の突発的な行動。
(しゃべったことないから、しゃべってみたい、か)
自由で羨ましい。
話したい人と話して、やりたいことを思い切りやってみるなんて、私にとっては考えたことすらない贅沢だ。
すっかり暗くなった窓の外に、ぼんやりと視線を移す。
アレルギーがなかったら、私は倉科と一緒に帰っただろうか?
そんな空しい考えが浮かんだのも初めてだった。
この体質とは死ぬまで付き合うことになると、諦めていたから。
最初のコメントを投稿しよう!