第五回 ムシを愛でる日本人

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日本人はムシが出す音をムシの奏でる音として認識する。 日本語を母語と持たない言語にとっては、ムシのだす雑音としてとらえるのと大きく隔たりがある。その理由のひとつとして日本語が母音 「あー」、「いー」、「うー」など声帯の振動をそのまま伝えることで発声される、つまり極めて自然に発せられる音である。対照的に、 子音は口や息で制動することによって発し、相手との距離を保ち、威嚇するための音らしいのだ。 人の脳は右脳と左脳に分かれている。右脳は感性や感覚を担い、左脳は言語や論理性を担うと一般的に認識されている。子音を母語としてもつ人は、虫の声を右脳で認識するが、日本語を持つ人だけは左脳で認識しているというのだ。そのため、多くの民族には虫の声は「雑音」にしか聞こえない一方、日本人には「言語」として認識されるようだ。 虫の鳴き声を言語として左脳で受け止める能力を有する日本人だからこそ、清少納言の 枕草子の中にムシのことに関する多く記述があり、「虫の声々いとあはれなり」にでてくる記述にも共感できる。 S氏は正真正銘の日本人である。それだけが理由ではないがムシがすきである。特にその奏でる曲がすきだ。 ということは右脳が音に対しては良くはたらいているのかもしれない。
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