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S氏の頭の中の過去の「うまおい」とは違っているな。
当然か、俺はあのころと比べると全然違う人間なのだからと心の中で思った。
うまおいは、足をばたつかせ「イヤ。イヤ」している。
はやく、俺を離せといってようだ。
S氏はうまおいに話かけた。「ここから飛翔しろ」
S氏のマンションの近くには都内でも大きな森林公園がある。
そこにいけば、うまおい君のパートーナーがいるだろう。
S氏は黙って、うまおいをベランダから外へ優しく放した。
うまおいは、大きく羽を広げ、東京タワーと光輝くビル群を背景にして
森林公園のほうめがけて飛び去った。
S氏はポケットからタバコを出して、ゆっくり煙をだしながら、子供の時に過ごした実家の山梨のことを思い耽った。
今週末ぐらいは仕事が落ち着きそうだから、久しぶりに実家にでも帰って、「甥っ子と一緒に虫取りでもするかな」と考えていた。
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