第六回 人の影響力

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彼女が入院したので、仕事の合間にお見舞いにいった。 普段はお見舞いにくる人も小声で話し、各部屋もカーテンを閉めていて静かな環境だ。 彼女は窓際だったため「外が見えていいわ」と言っていた。 僕も「ここは医師や医療スタッフもいいと評判だから早く治るよ」と答えた。 しかしながら、その静寂を破るようなことが起こった。 新しく入院してきたお婆さんは認知症と聞かされたが、良くしゃべる、それも意味の通らないことを大きな声でずっと話し続ける。 特に悪口を話し続けているときはこちらもきいていられないほどだった。 あまりにもうるさいので、僕は師長に「何とかならないか」とクレームを入れた。 そして、「僕たちは三割負担ですから、お支払いする料金だって少ない金額を支払っているわけではないんですよ」と言ってしまった。 師長は、「すみませんね、もう少しで別の病院に転院しますから」と平謝りをした。 色々な看護師さんが対応に追われるがどの人も気に食わないらしく「でていけ」とか言っている。 だが、一人の今年新卒で来たばかりの幼い感じが残る看護師のAさんに対しては不思議と素直に従っていた。 僕は何がちがうのだろうと疑問に思った。 理由が分かった。 そのお婆さんと同じ方言を使うのだ。 その特徴のある地域の方言は僕がどこの地域かは知らないが、お婆さんは安心するようだ。
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