第一回 下僕

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「でも、こいつらには感謝しているのよ」と五右衛門は意外なことをいった。 「黙って、労働をして「お金」をえてくるからねと」 ミズコシは疑問に思い、「お金とはなんですか」 「うーん馬鹿どもね」と五右衛門は蔑んだ目でみた。 「お金があれば、全部買えるのよ、人の心だってね」 ミズコシには理解できなさそうだった。 「お金のために、こころを売る」 「一体全体どういうことなんだ、この1919地球世界では」 「もう面倒くさいからこの話はやめましょう」 「とにかく、アイツらの前ではお腹がすいたり」 「背中を掻いてほしいときはにゃんにゃん」といっておいて、 「尻尾をあいつらの躰に擦りつけといけばいいのよ」 「特にあのおっさんは家族の中では邪魔扱いされているから」 「私も気を使って、四六時中あいつのことを見ているのよ」 「それで、落ち込んでるな」と思ったら気をつかって、 「ごろごろにゃーん」と声かけを励行しているわ。 「すると、この1919地球世界では、猫が主人で人間は下僕ですか」 69地球世界からきたミズコシはそう結論付けた。 「分かったら、さっさと出ていって」 「私の貴重な寝る時間を奪わないで」と面倒くさそうにいった。 いろいろな人間が住む地球に訪れたがこんなことをはじめてだ。 「猫は非力だし、高等な知能を有しないにから、文明などつくりそうにもないのにな」 誰かがいった。 「パラサイトだ」 「そうかもな」 「違う文明に接すると本当に勉強になる」 とミズコシは呟いた。
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