トレジャーゴースト

人は、過去に依存する生き物である。

いや、これでは少し言葉が足りない。
万物は、常に時間に依存する。
こちらの方がより正確だろう。

つまり何が言いたいのかというと、
過去を変えることは出来ないし過去のない人間はどこにもいないだろうということだ。

更に言うと、人間はそれら過去の事象を「思い出」というフィルターを通し美化しようとする。
辛かった日々も、二度と経験したくないような恥ずかしい出来事も、全ては良き思い出となる。
「あの頃があったから今の自分がある」と、今の自分を肯定する材料に作り替えてしまう。

――喉元過ぎれば熱さを忘れる。

なんて愚かしい思考だろう。
どんなことも遠い過去の出来事として自身が認識してしまえばなかったことと同じになるのだ。
そうやって何度も人間は間違いを犯し続けているというのに。

俺は違う。
俺はこれまでの屈辱の日々を許さない。
いつだって覚えているのは「被害者」の側だ。
加害者は、早く忘れてしまいたいからさっさとその日々を思い出に変えてしまう。

俺は、俺をこんな風にしたあいつらを、絶対に許さない。