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アルコールは記憶を美化する為の精力剤である。
そして旧友とはそれらを助長するひとつのファクターとなる。
「えーそれでは十年越しの再会を祝しまして…カンパーイ!」
「「「カンパーイ!!」」」
その一声で、途端に騒がしくなる居酒屋の一角。
遠くの方でうっすらと流行りの過ぎ去ったポップスが聞こえるが、
この雑多の中ではノイズと大差ない。
なんて居心地の悪い。
胸がムカムカする。
どれだけ喧しいんだこいつら。
全員殴り殺してやりたい衝動に駆られるが、ぐっと堪えて目の前のつまみを見つめる。
「久しぶりだねー! 元気してたー!?」
「はぁ!? お前こどもいんの!? しかも三人!? っはー……」
「結局今日全員いんのこれ?」
「いや、鈴木先生体調悪いらしくて……あと、吉田は誰も連絡先知らなくて……」
最早誰と見当も判別も利かない紳士淑女(とは思えない下品な格好と言葉遣いだが)達の会話を聞き流し、頼んだカルアミルクにそっと口をつける。
なるほど、甘過ぎる。何もかもが。
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