夏休みが終わってしまう・・・・・・

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 明日から学校が始まるというのに、夏休みの宿題がまったくの白紙である。もはや絶体絶命、いまからラストスパートをかけたところで焼石の水だ。原因不明の病気にかかって、学校を休んでしまいたい。  高校生になったいまも、いやなことは後回しにして、直前になってのたうち回って自分を罵る性格は治らない。  夏休みの前半に綺麗に宿題を終わらせている友人たちに嫉妬する。夏休みなんて遊ぶためにあるはずなのに、なんで真面目に勉強をしているのだ。抜け駆けするなんてずるい! 不合理だ、非常識だ!   抜け駆けして宿題を終わらせている友人たちはなにか不幸が降りかかればいいのに。  私だけなぜ苦しまなければならないのだ。まったく理不尽だ!  結局宿題は白紙のまま、晩御飯の時間になる。夏休みが終わってしまう。 「明日から学校よね」と母親は言う。「もう宿題はちゃんと終わらせたんでしょうね」 「ま、まあね」  麦茶のコップを持つ私の手が震える。 「夏休みなんてあっという間だろ」父親は他人事のように言う。「ハワイのバカンス楽しかったな。香菜もまた行きたいよな」  ハワイのホテルで宿題をちょっとでもやっていれば、違った運命になっていたのだろうか。いまとなっては後の祭りだ。  好物の鶏のから揚げが目の前に並んでいるのに、ほとんど味も分からない。  急にひらめいて、私は晩御飯にほとんど手を付けない。 「どうしたの?」と母親は心配そうに訊く。「食欲ないの?」 「ちょっと気分が悪いかも」  ぼそりとつぶやく。 「今日ははやく寝たほうがいいぞ」 「うん、そうする」    私は風呂場で真水のシャワーを全身に浴びる。心臓が縮み上がるくらい冷たい水だ。  髪も満足に乾かさず、シャツをめくってお腹を出したまま部屋のベッドで横たわる。  神様、どうか私を病気にしてください。高熱を出して、学校を一週間は休ませてください。でもその間に宿題を終わらせることができるくらいには元気にしておいてください。もし可能なら、私の代わりに神様が宿題を終わらせてください。神様、どうかお願いします。  神様に注文の多い祈りを懸命につぶやきつつ、私は眠りに落ちていく。
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