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それでも医者は見透かしたようなことを言う。見透かしているわけでは無論ないのだが、勝手な決めつけがたまたま当たっているだけの話。本当に何かを見透かせる医学的なものはレントゲンやCTスキャンだけなのだ。
「いいえ、あまり」
「それはいけませんな。足腰も弱ってしまいます」
「鍛える甲斐もありません」
医者は常に生を肯定しなければいけない立場にいて、それから外れることは許されない。無邪気に信じているのか信じたふりを職業的にしているのかはわからないが、ともかく医者はそうしていると外からは見える。
医者が帰ってゆくと美咲さんは妙な感じに腰を折り曲げて送り出した。医者の肩書きがあるからといって、そんなにも敬うこともあるまいという気がするが、先生と名がつくとそうなってしまう、世の中に多くいるおそらくは素敵な人だ。自分のような者はだから素敵とは言われない。思ってほしいという意識があるわけでもないのだからそれは別に構わない。大きなお屋敷があって写真を燃やすような精神のくたびれた、人生を降りかけた人間が棲んでいる。そんな隔絶された世界をよそに、世界は正常に動いている。
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