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「どうだった?全っ然似てないだろ」
いきなり声が聞こえて驚き振り向きかけたところを
後ろから覆い被さってデジカメを持ってる手に
監督の手が上から重ねられた。
「ずっと気にしてた?」
監督の体温が温かい。
だからかもしれないけど背中に感じる熱の所為で
ドキドキが止まらなくって、さっきから
心臓が破裂しそうに痛い。
「……してません」
するに決まってるでしょう。
「ゴメン、余計なこと言ったな」
「だから、してないって……」
「安心していい、俺の中には
お前以外0.1ミクロンだって存在してないよ」
俺の手に被せられた手ごと抱きしめられた。
クサイ台詞吐かないで下さい。
免疫無いから反応に困るんです。
「好きだよ、岩倉」
「……か」
監督の吐息が首筋にかかる。
本当、この時点で黙って
余計な事を言わず終わっていれば……
恥ずかしさで誤魔化さず
素直に嬉しさを噛み締めていれば
良かったんだと何度後悔したか。
でも俺は―――
過剰すぎる照れのあまり
話を逸らそうとその話題に触れてしまった。
……黙っていれば知らないままでいられた。
監督の真意が別にあるとか気付かずに済んだのに。
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