タイトルは面倒なのでつけません。

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「そこに何があったんですか?」 俺は、堪らずそう口に出してしまっていた。 監督は最初珍しく少しだけ迷っている 感じだったけど、お前には話しておくかと ポソッと呟いた。 「――俺さ、高校生のころ棋院での対局や プロとしての指導碁に飽き足らず、 家でもネットで碁を打つほど 囲碁漬けの日々を送ってたんだ。 特にネット碁は対面とは違って 相手がどんな奴か分からない、 相手も俺が“紺里夏以”とは知らない、 それが面白くてドはまりしてさ、 それこそ手当たり次第に色んな奴と打ってた」 より強い奴を求めて彷徨う囲碁ジャンキー とでも言うべきか?と監督は笑う。 「ネット名は【invicta“A”】 インヴィクタ’エース=無敵のエース。 って意味で、如何にも いきがってるガキらしい発想だろ。 だが正直、同じくらいの年齢の奴に 負ける気はしなかったよ」 そう語る監督の表情はまるでその高校生当時に 戻ったかのような好戦的で自信に満ち溢れていて その威圧感にも似た様子に飲まれた俺は 知らず唾を飲み込んでいた。
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