憎しみは人を盲目にする。―オスカーワイルド

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不機嫌極まりない。満男はそう思いながらも自分の心を押し殺して、コーヒーを啜る。水で薄めたような不味いコーヒーだった。こんなものに300円も払うなんて馬鹿げている。たった300円を出し惜しんでいる自分も。満男が不機嫌なのはコーヒーの件だけではない。にやけ顔で、顔を赤らめている向かい側の席の友人のせいでもある。会ってからずっとこの状態だというのだから、気持ち悪くて仕方ない。 「その由美って女、どうせサクラかなんかだろう?」 満男は内心、そうであってくれと思っている自分がいた。 「いやいや、ここはちゃんとしたサイトだよ。その証拠にポイントとか胡散臭いものがない」 「でも出会い系って怖いだろ。騙されたりするかもしれない」 「お前は本当に保身的だなぁ」 もうほとんど手をつけていないコーヒーの氷が自分勝手にカランと鳴った。その合図と同時に、にやけ顔の友人は携帯を操作しだした。そして満男に画面を見せつけてきた。 「これが由美って女か?」 満男は思わず乗り出して画面へ顔を近づけた。 何とも可愛らしい女性がそこに映っている。一方の、携帯を持っている男の方はお世辞にも格好いいとは言えない面をしているのに。 「可愛いだろ。まだ21なんだってよ」 友人は携帯の画面を、更に崩れたにやけ顔で見つめた。友人の歳は今年で50。頭のハゲ上がったおじさんに、こんな可愛い子が何故。俺の方がまだ格好いいのに。満男は悔しさに唇を噛み締めた。 「お前もやってみたらどうだ?オススメするよ」 友人は自分の世界に浸っていた。出会い系?バカバカしい。そんなの、自分からモテないと認めているようなものじゃないか。 夕方になり、満男は自宅の狭い部屋でパソコンと向かいあった。検索バーに、出会い 無料と打った。 少し覗いて見るだけだ。そう言い聞かせると、一番上部に表示されたサイトのリンクを叩く。 嘘か本当か男性利用者数が100万人らしい。満男は、勃起した男共が密集して性欲を露にしている図を思い浮かべた。 いかにも良心的さを演出したHPが満男を迎えた。サイトに入っていきなり、写真が並んでいる。こうもネットに単純に自分をさらけ出せるのはある意味凄い。写真は胸を露出している女性から、かなり慎重に手の甲だけを写した写真など様々だった。年齢も20代から50代までと幅広い。
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