憎しみは人を盲目にする。―オスカーワイルド

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「もちろん会うさ。お前なんかと違って俺はモテるからな」 満男の前に、水滴のついた瓶ビールとコップが置かれる。友人の言葉に少なからずムッとして、ビールを注ぎながら反論した。 「そういや俺も会ったんだよ」 「ん?会ったって、誰に」 ビールの泡立つ爽快な音が会話の中に混ざり込んだ。まるで早くあなたの喉へ流し込んでと訴えるようだ。 「実はあの出会い系使ったんだ。それで年下のミクって子と会ってきた」 友人は唇の端を下げた。剃り残しのある顎にシワが出来る。明らかに不満げだった。 「それで?どうだった?」 「思ったより可愛かったよ。でも俺なんかにはもったいないくらい、いい子だった」 「そうか、それは残念だったな」 友人はぐびりと、焼酎を喉に流した。耳は赤くなっている。もうこれ以上飲んだら危ないだろう。だが、友人を止めるのは無駄なことだと満男は知っていた。 「残念って、どうして」 「その様子じゃ、お前してないだろ」 友人の目はひっくり返った三日月のように歪んだ。友人が言いたいことは、恐らくアレの事だろう。 「そりゃあ初めて会うし。第一そんな雰囲気にならなかったしな」 実際、やりたかったのは事実だが、それよりも己の欲の為にミクに嫌われて二度と会えなくなるのは嫌だった。 「だからお前はダメなんだよ。いつまで経っても」 「もしかしてお前、いったのか?」 友人の顔は見るからにいやらしくなった。もしこんな顔で夜道を彷徨いたら絶対に通報されるだろう。 「ああ。もうメロメロだ。ま、お前とは違って俺はやることが早いから」 友人はふっと鼻で笑って、つまみのレバ刺しをネギと一緒に口に入れた。 胸の中が燃えるように熱くなった。こいつの言う通りじゃないか。ビールを飲み干すと、満男の頭の中に前回のデートの様子が浮かんでくる。あの時もしかして誘えたんじゃないか?本当に嫌なら会うことすらしないはずだ。つまり、男として選ばれたって事なんじゃないか。もしかして俺はもったいない事をしたのか。 まだビール一本目だというのに、頭が痛くなってきた。 。
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