憎しみは人を盲目にする。―オスカーワイルド

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「だって……、こんなに気兼ねなく話せる人で良かったなっ」 まだ会って1時間も経っていないのに、と満男は思った。でもそれを言うのは野暮だと分かっている。女はその場の雰囲気で、1分が5分に、10分が30分にも変わるものだ。女の話にいちいち合理的に返事をするのはどっちにとっても良くない。そんな返事をするくらいなら、今日の髪型や化粧を褒めてやった方が余程いい。ただし、セクハラと思われないように最新の注意が必要だ。 「俺も、写真で見ても綺麗だったけど、実物もこんな綺麗な人だったなんて、ビックリした」 すると、ミクはわかりやすくはにかんだ。ほら見ろ、これでいいんだ。 「ありがとうございます。男の人って体目的が多いから、ちょっと不安だったんですけど違くて良かったです」 と、ミクは見当違いの事を言った。満男は内心、そんなわけないだろ。と叫びたくなったが抑えた。 「あはは、俺はそんな男じゃないよ」 サイフォンで淹れたコーヒーを啜る。ブラジル産の苦味が舌を包み込んだ。 「また会えますか?」 ミクの本音か嘘かも分からぬ質問に、満男はにっこりと笑って答えた。 「もちろん。今度は夜景でも一緒に見ようよ。この時期は六本木のイルミネーションが綺麗だよ」
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