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ジェラシーの行方
華やかな皇都のメインストリートに、その建物はある。
外観は神殿のようだが、内部は最新式のモダン建築だ。
皇都劇場——
今夜も着飾った連中が、つれだって入っていく。ここは貴族や金持ちの社交の場だ。
ことに今の演し物は半年以上も続くロングランだ。
新人女優ロレーナに、皇都の文化人は夢中になっている。
皇都劇場は今夜も大入り満員だ。
とはいえ、ワレスは芝居を観たくて来たわけじゃない。
愛人で後見人の女侯爵ジョスリーヌが、ロレーナに会ってみたいと、だだをこねたからだ。
「なんで女優になんて会いたいんだ? あんた好みの男優が、彼女と結婚するとでも言いだしたのか?」
ジョスリーヌは真珠をちりばめた黒いドレスに、大粒のエメラルドの首飾りといういでたち。
「流行りの演し物だっていうから、ヒマつぶしに観たいだけ」
ウソだ。
大貴族の一人娘のジョスリーヌは、流行りすたりなんて、まったく気にしない。気が向けば劇団ごとおかかえにするし、気に入らなければ見向きもしない。そういう女だ。
とは言え、ジョスリーヌが言いだせば、ワレスは従うしかない。満員の劇場へ、エスコート役としてつきそった。
大階段の踊り場には、名優たちの肖像画。
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