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そもそも本来の私はこんな風に自己主張をするような人間ではなかった。
彼が結婚した時も自分を見失わず、常に冷静を貫いた。
けれど誰も恐怖には打ち勝てない。
見えなくなってきている。
その事実が私を突き動かしている。
今しかない時間を無駄にはできない。
絶対にできない。
私はスカートの中からリモコンを取り出すと、諦めて優花に手渡す。
優花はすぐにテレビを消し、リモコンをエプロンのポケットに入れてしまった。
「お嬢さま…、今日はいつもより一時間もオーバーなさってます。」
「わかってる。反省してるわ。」
「すぐに目を温めるタオルをお持ちしますので、お嬢さまはもう休まれてください。」
「わかったわ。ありがとう。」
優花が部屋から出て行き、私は天蓋付きベッドに横になる。
目を閉じ、それでも光を感じる。
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