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あの戦いから数日が経った。
あれから政府の依頼をこなしつつも各々が怪我をしているため、それ以上はあまり動かない日々を送っていた。
それはセツナとゼンも同じである。
だが何もしないというのは、考える時間があるということで――――
「――――で、どうしたの?」
トン、とセツナの部屋の扉の前に立ち、その扉に寄り掛かりながらゼンは言う。
それにセツナは訝しげな顔をしつつ、目線を逸らして「なにがだ」と返した。
「ほら、なにかあるんでしょ」
視線を逸らすとか、セツナらしくないよね。
言いながら入ってくるゼンは、もう黒い手袋を嵌めている。昨日までは包帯をまだ巻いていた筈だ。
「手はもういいのか?」
「あー、もう痛くないしね。いつも黒い手袋なのに白い包帯とかこう、腹立つんだよね」
色々思い出しちゃってさー。
言いながら顔を顰めるゼンが思い出すのはきっとグレイのことだろう。
白いスーツに白い手袋。黒いB・Sと真逆な白には確かに苦い思い出だろう。B・Sが傷つけられるだなんて、いつぶりのことだろうか。それくらい久しいものだった。
同じことを思ったのか、ゼンも不機嫌そうな表情になり言う。
「やっぱ殺しとけばよかった、っていうか、話し逸らさないでよ」
部屋に入って来たゼンは立っているセツナの後ろにあるベッドに腰掛け、隣に座るようポンポンとベッドを軽く叩いた。
「何か言いたいことあるんでしょ?」
「別にない」
それをセツナは無視し、机に置いておいた刀を手に取ろうとするとグイと引っ張られる。少し驚いた声を上げ後ろ手で受け身を取ろうとするが、ズキリと腕が痛んで骨折がまだ治っていないことを思いだし、そのままゼンの胸の中、膝の上へと座らせられる。
「おいゼンっ」
「セツナはホント嘘が好きだよね」
ぎゅぅ、と腰辺りを抱きしめられ、否定する言葉が出てこない。
ゼンはいつもこうだ。
どんな隠し事も見破って、こちらが話すまで必要以上に構ってくる。
無理やり刀とナイフを交ぜて聞き出せばいいのに、彼は甘い甘い言葉を囁いて、優しくして、自然とこちらが口を開くのを待っている。
本当に性質の悪い奴だとセツナは思う。
そしてその甘さに負けてしまう自分も腹立たしい。
「―――なにが言いたいのか分かってるんだろ?」
「まぁ、セツナのことだからね」
何を気にしているのかは、なんとなーく。
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