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何でも出来て良いね、なんてよく言われるけれど、そんな事はないと大声で否定してやりたい。何でも出来るなんてあまり嬉しくない。勿論そんな心情を吐露すれば、オレは即座に糾弾されて、贅沢だと罵られるんだろうけど。
才能があれば幸せ、天才なら幸せなんて、所詮隣の芝生なんだ。其れを言ったらオレが才能なんていらない、って思うのも隣の芝生なのかもしれない。
其れでも成績は常に上位をキープ。運動神経も抜群で、部活には無所属ながら何処のレギュラーにも負けないという自負と、事実として其の実績がある。
自分で言うとナルシストも甚だしいが、オレが歩けば其の後から功績がぽんぽん出来上がっていった。
其れでも、オレが勝てない相手は1人だけ居る。
オレが成績に於いて譲らないのが上位であるのなら、常にトップを譲らないヤツが1人。
「麗陽は相変らず頭良いよねぇ」
「……いや、お前も悪くないだろ。つーか世間一般の尺度で語れば良いだろ。優秀だろ。相手がオレじゃなかったら殴られても文句言えない台詞だぞ?」
口には出さなかったけれど、如何にも自分は頭が悪くて参っています、と言わんばかりに感心してみれば、麗陽は見事に其れを見抜いて、半ば呆れた様に、半ば冗談めかして笑いながら。そして本気でオレを案じて窘めてくれる。
麗陽は友人の贔屓目とか無しに、よく出来た男だと思う。
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