「アンタに成れたら良いのに」

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 人を想う事を知っている。  誰かを気遣う事が出来る。  頭の良さを鼻に掛けず、かと言って謙遜もしないし、本当に頭が良い人の常として教え方も上手いらしい。生憎相手が麗陽であっても教えを請う程の出来ではないオレには、いくら友人とは言え麗陽先生になってもらった事はないけれど。  そんな麗陽の周囲に人が集まるのは自然な事。対して何でも出来すぎるオレは遠巻きに見つめられるのもまた、自然な事だった。  ……確かにオレは、麗陽みたく性格が良いって言うか、人当たりが良くもないから避けられて自然で仕方ない事だろうけど。 「麗陽が羨ましいなぁ」 「そうか?オレは勉強しか能がないけど、お前は何でも出来るじゃねぇか。元気一杯に駆け回れるのは、オレの方が羨みたいよ」  肩を竦めて麗陽は言う。  其の肩は異様に細いし、肩だけじゃなくて全体的に線が細い。顔も白いし。  整った顔も相俟って儚げな美少年、って感じだ。まあ実際麗陽は儚いというか、体が弱いから、激しい運動は自重してるんだけど。  麗陽の言う通り、世間から見れば何ら制約なく動き回れる上、元気一杯と言わんばかりのオレが恵まれているんだろう。小さい頃から病気と言ったら風邪、怪我と言ったら擦り傷が精々だったし。
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