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月夜が自分を羨ましがられる事を嫌っているのを知っている。才能を邪魔だとさえ思っている事も。
だから月夜の前では口が裂けても言えない。でもオレは月夜になりたいのだ。
其れは彼の、オレにはない才能に焦がれての事じゃない。
別段運動をしてみたいと思うなら、対象は月夜でなくても構わない。そもそも其処迄運動に魅力を感じた事はないし。
オレは、そう。誰も切れないから。いらない好意さえも切れないから。だから。
だから、まるで本当に大切な人をぞんざいに扱っていないか、不安でならないのだ。
その人に唯一無二の親友だと伝わっていない様に思えてしまうのだ。
だからこそ、要らない好意を斬り捨てられる月夜になりたい。もっとも実際月夜になってしまったらオレ、麗陽の人間関係を切れるワケではないから、意味がない。
正確に言えば、月夜の様になりたいのだ。
月夜の様に要らぬものを要らぬと斬り捨てられれば、オレの人間関係は月夜だけで完結する。名実共に月夜が唯一無二の親友。
月夜にも誤解なく伝わるだろう。
其れでもそんな浅ましいオレを、汚いオレを此の唯一無二の親友に晒す勇気もないから。
オレは月夜が笑って紡いだ口癖に、同じく笑顔を返すのだ。
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