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悪童みたいな彼女。
深夜帯シフト明けの翌日はやはり眠い。たとえ、淡い憧れを抱いている人の部屋を尋ねるとはいえ。
連絡先は、LINEの交換だけで済ませた。今思えば、どこか事務的だった。
彼女の家は、レンタルビデオ店からほど近いマンションだった。同じ大学とはいえ、真昼間とはいえ、いきなり部屋に男を上げるというのは、どうなのだろう。まったく警戒されていないというか、まるで気の合う同性の友達のような感覚だ。
306号室。表札には藍原と記されている。
チャイムを押すと、彼女がドアを開けて迎え入れる。格好は、少しよれたシャツの上に薄手のカーディガンを羽織っており、下は七分丈の裾がラッパ状に広がった風通しのよさそうな綿のズボンを履いている。オシャレというよりは機能性を重視しているように見えた。
「近いでしょ。ここ」
「うん」
髪型はヘアゴムで後ろに束ねただけのシンプルなおさげ。実験授業で見たヘアスタイルと同じもの。そして見慣れた太い黒縁の眼鏡をかけていた。
部屋の内装をきょろきょろと見まわす。
「なに、そんな珍しい?」
「いや……、こういうの初めてだから」
「あんまり女の子っぽい部屋じゃないから、後の参考にはならないよ」
たしかに、想像したよりはすごくシンプルな部屋だ。
床には、控えめな花柄の絨毯が敷いてあり、その上には長方形のテーブルと、身体にフィットして窪む巨大なビーズクッションのようなソファーがある。ソファーのちょうど向かいに薄型の液晶テレビモニターがラップトップのPCに繋がれている。あとは三段ボックスが壁沿いに並べられていて、ベッドがあるくらいだ。ところどころ生活感はあるが、なんというかモデルルームのようなシンプルさだ。
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