悪童みたいな彼女。

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 三段ボックスにはレースカーテンがされていて、中に並べられているものが見えなくなっている。「ジャーン」とご丁寧に効果音を付けて、彼女はカーテンを開いた。中には想像した通り、彼女の秘密があった。 「レンタルで吟味して、気に入ったら買ってるの。サスペンス・スリラーに分類されるけれど、ハンニバル・レクター関連は全シリーズ揃えている。好きなのはジェイソンにフレディ。ファイナル・デスティネーション。メジャーなところだと、スティーブン・キング原作は必ず見るというか、見ちゃうかな」  DVDケースはどれもこれもおどろおどろしいものや、禍々しいものばかり。  しかし、背表紙をなぞったり、たまに取り出してくるくるとDVDケースを表裏と返しながら語るその声は、浮ついていて歌を歌うかのようにも聞こえる。 「だけど、B級のスプラッタ作品が一番ツボかな。見ていて低予算と分かるチープさが癖になるの。あと脚本がツッコミどころ満載なのも。ダミーの死体よりも血糊の方が安いからと、わざとオーバーに血糊を使ってダミーは冷静に見ればマネキンなのが丸わかりだったり。これなんか最高」  彼女が見せてきたのは、‘ザ・人間爆弾’というなんとも悪趣味なタイトルだ。 「怪しいサイトで注文したチーズを肴に飲み明かしたおバカな7人の男。変な味のするチーズだと思いながらも全部食べてしまう。しかし、それはテロ組織が開発したプラスチック爆弾。そして7人はその瞬間から興奮すると爆発してしまう人間爆弾になってしまうのだ。果たして7人は、興奮せずに生き残れるのかっ!?」  聞いているだけでバカバカしい。これがスプラッタ映画ということは、何人かは爆発して肉片が飛散するという悲惨な最期を遂げるのだろう。 「中盤は、ほんとお下品よ。あまり言いたくないくらい」  そう言って笑う彼女の顔は、悪ガキみたいにヤンチャだ。右の頬にできるえくぼが愛らしい。
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