未来から

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私は大学の研究機関で助手としてアルバイトをしていた。 仕事は単純な雑用なので高校生の私でもつつがなくこなしていると。ある日の事である研究機関長が私に重要な任務をしないかと声をかけられた。 私の所属している研究機関が次元データ転送技術により私は三十年前に行かないかと持ち掛けられた。 私は一晩考えさせて下さいと頼んだ。 研究機関からの帰り道にこの大学の名物の銀杏並木を通り抜けていた。秋には落ち葉が舞下りて近所の子供達の絶好の遊び場になる。青くしげる銀杏もデータの塊で世界は終わりを迎えようしていた。 電車を乗り継ぎ自宅のマンションに着く。もう一時間かかっても良いから、もう少し大きめの間取のマンションにして欲しかったと少し親を恨んでいた。 「ただいま」 「お帰り」 私は親との挨拶もそこそこに自室に籠ると趣味のCDなる媒体でビートルズの音楽を聴く この時代CDを扱う店は少なくまた高価なので何枚かあるCDは一財産である。 愛とか平和を歌った曲はこの終わりを迎えた世界には皮肉でしかなかった。 データ化された人類は戦争や内乱の悲劇をさらに好む様になり生物として終焉は近いとされていた。
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