煙草の山を踏み潰す

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「僕は一人っ子だから分からないけどさ、やっぱりお姉さんのことは大切にした方がいいと思うんだ。……飲み物、何かいる?」  マグカップの中には、半分ほどコーヒーが残っている。 「キャラメルマキアート」 「ここ、そんな洒落た飲み物あった?」 「なかったら、メロンソーダ」 「了解」  そう言って智則は席を立つ。  イライラしたときは智則を近所のファミレスに呼びだし呪詛を紡ぐ。これは物心ついたときからの習慣になっていた。  智則は良い。市内でもそれなりに大きい病院の医院長の一人息子。坊ちゃんカットと黒縁眼鏡は育ちの良さを象徴し、何より成績優秀者。やっぱり勉強ができる人間というのは信頼に足り得る。  正直、私にはいわゆる友達というものが少ない、というか、いない。学校の外で会うのは智則くらいだったし、彼にしても友達というのは少し違和感があった。 「はい、メロンソーダ」  戻って来た智則は、そう言って私の前に鮮やかな緑色の液体に満たされたグラスを置く。それから席に着くと、彼は自分の分のウーロン茶を飲み始めた。  私もまた、メロンソーダに挿されたストローに口をつける。ゆっくり息を吸うと、白色のストローの中を緑の液体が昇っていくのが透けて見える。口の中に侵入し広がったそいつは無駄に甘ったるく、口直しにと飲んだブラックコーヒーはやはり苦く、私は思わず溜息を吐いた。
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